理想的な“劇場版”

劇場版響け!ユーフォニアム〜届けたいメロディ〜
2017年/京都アニメーション制作/小川太一監督
テレビシリーズ2期全13話のうち、後半のエピソードを中心に再構成した総集編…なのだけど、新規カットが大幅に加わっただけでなく、時系列も大胆に再構築し、<一本の映画>として成立させているのがすばらしい。確かに、人物関係の細々などは全くの初見ではわかりづらいところもあるかもだけれども、まとめ方としては前回の劇場版(テレビ第一シリーズの総集編)よりもはるかにうまくいってると思った。
テレビ2期は1期シリーズ/劇場版を楽々越えてきたなあ、と感じ入っていたけれど、今作はそれをもさらっと超えてきた。京アニ、攻めてるなあ(攻めてるといえば来年4月公開予定のユーフォ劇場版/山田尚子監督作の予告にも度肝を抜かれた。なるほど、そう来るかあ(新作小説を読んでなかったらまるきり????だったと思うけど))。
細かくストーリーを追えば、田中あすか先輩の「突出したカリスマ性」が序盤でもっと表現されていれば後半の展開に説得力がさらに増しただろうし、控えメンバー中川夏紀の、けして表面には出せない葛藤にももっと深みが出ただろう。しかし、そこまで求めるのはこの尺では酷でもあるかもしれない。そういった諸々は言外には匂わせつつ、最優先すべき物語をきちんと畳まなければならない。監督/脚本の苦悩が見えるようだった。
新規カットはどれも見応えがあり、映画館で見るにふさわしい音響だった。時間が取れたらもう一度くらいは見に行きたいなあ。