戦国バロックだぁ

久々にコミックスネタ。
山田芳裕へうげもの』第1巻(講談社/モーニングKC1487/ISBN4-06-372487-5/2005年12月)
祝・単行本化! 雑誌では読んでいなかった回もあったので、やっとまとめて読むことができた。いやはや、すごいすごい。
って、私は基本的にその作品が完結するまで(つまり物語の首尾が整うまで)あーだこーだは言わないでおく態度をとってるんだけど、まぁそんなおカタいことはいいや。このマンガをまだ読んだことない人は、とにかく書店に走れ! である。
時は戦国時代、織田信長がすさまじい勢いで天下を統一しようとしていた時代のおはなし。信長のお使い番として仕える古田左介というひとりの武将が主人公なのだが、この「齢三十四」のおっさん、稀代のモノ好きなんである。染付茶碗とひきかえに討つべき敵を見逃しちゃったりするほどなんである。
信長や千利休など、当代随一の数奇者・目利きがどんどん登場し、左介もずば抜けた目利きの力で動乱の世を生き抜いていく。戦国時代をこのように捉えたその目線が面白いし、一見突飛でいかにもマンガ的な世界観のようにも思えるのだが、意外なほどに真面目でごくまっとうな歴史説話になっているように思う。ていうか、教科書的な日本史ではまず語られることのない切り口として、たいへん興味深い。
この作者の前作は米大リーグが舞台の『ジャイアント』だったっけ、これもモーニング誌上でしか読んだことがないんだけれど、極端にパースをかけたほとんどバロック的な作画が強く印象に残っている。今作でもその傾向は見られるが、構図はかなり普通。画面をわざわざバロックにするまでもなく、物語の登場人物じたいがみなバロックな人々ばかりなので、作家としては物語を普通に語るだけで充分、なのかもしれない(第一話はこの人ならではの構図がたくさん出てくるが、話が進むにつれ次第に普通になっていく)。読者の勝手な意見としては、やはりここは信長にケンカを売るくらい、作画面でも大暴れして欲しいとも思うが、まぁあまりやりすぎるとわけのわからん前衛作品になってしまうのかも。
ともあれ、続きが早く読みたいぞ、と。