「買いどき」

そう、この言葉はあくまで販売店の論理なのだ。メーカーには厳然たる「買いどき」が存在するのである。

新製品発表直後の旧製品が買い時という、まあ当たり前のことを言っているにすぎないんだけれども、問題はその「新製品」が、安くなった旧製品よりも格段に良いもの(自分に必要なもの)であるかどうかの見極めが、なかなか難しいってことがあるんじゃないか。


旧製品を安く買って、そのぶん周辺機器だのオプション品だのを揃えて自分流にカスタマイズするというのも手だし、最初から新機能が揃った新製品をチョイスした方が便利でラクでおトクな場合もある。
で、そのあたりの判断をどうするか、となると、日頃から「自分の欲している機能」をそれなりに把握しつつ「新旧製品の機能差」について瞬時に理解できるだけの知識がなければならない。結局はふだんの情報収集能力がものを言う。
でも、そんなもん、ごく一部のジャンルではまあ可能だろうけど、世の中の商品全てにそんな「賢い消費者」をやってられるワケがない。だからこそ、カカクだとかの口コミサイトが繁盛する理由があるんだけど。


大原則としては、旧製品よりも新製品の方が「良く」なっているはずであり、定価だけど常に新製品を求める、という人はそれはそれで間違ってはいないと思う。同様に、最近の製品ってどれも同じようなモノだしだいいちすぐ壊れるんだし、安い方がいいに決まっている、と、型番落ちしか買わない人もいるだろう。それもべつに間違ってはいないような気がする。要するに「どっちもどっち」だ。
真に賢い買い物とは、「新製品には自分の用途では全く使わない無駄な機能がついていて、それ要らないから旧製品の方を選ぶ」という確固たる信念が持てる場合のみ当てはまるものだろう。基本的なつくりがよい(頑丈だとか、材質がいいとか)から旧製品の方が、ということもある。そういう旧製品は時間がたてば入手不可になるから、早めに買っておかなければならない。で、買いどきを逃してしまうと、オークションだのなんだのでかえって高くつく場合も出てくる。
オークション入札してまで手に入れたい製品なら多少の値段の上下は関係なくなる。とっくに廃番になった製品が、急に必要になったので必死に探している、という状況。これつまり「必要なときが買いどき」。


で、結論。その商品が本当に必要なら、人は金に糸目をつけない。糸目をつける、あるいはごくわずかの差額を気にする程度では、実は「本当に必要」なわけではない。「欲しいとき」は必ずしも「必要なとき」とイコールではない、そのことだけちゃんと自覚していれば、そうそうアホな買い物はしないんじゃないかな。まあ、世の中には、ろくに使いもしない新製品を「できるだけいち早く/できるだけ安く買う」ことに生き甲斐を見いだしている人もいるが、それはその人の趣味なので他人が口出しすることではない。