デュシャンのことば

美術史というのは、美学とはずいぶん違ったものです。私にとって美術史とは、美術館に残されたある時代のもののことです。しかしそれは必ずしもその時代の最良のものとはかぎりませんし、実際にはおそらくその時代の凡庸さを示すものでさえあるでしょう。なぜなら、美しいものは、人びとが保存しようと思わないために、消え去ってしまうからです。

デュシャンは語る』マルセル・デュシャン+ピエール・カバンヌ/岩佐鉄男小林康夫訳/ちくま学芸文庫p.138