シルク・ドゥ・ソレイユ3D 彼方からの物語

公式サイトはこちら→http://www.cirque-3d.jp/

もうすぐ公開終了ということで慌てて観に行った。てか、監督がジェームズ・キャメロンだとかそういうことも知らずに、ただシルクの映画だ、というその一点だけで観た映画。
3Dはねえ、、、同じキャメロンの『アバター』をはじめ5〜6点くらい観ていると思うが(あまり覚えてない。タンタンとピナと…あと何観たっけ?)、たまたま手にした3Dメガネの質にもよるとは思うけど、たとえば発色が良くないとか、メガネonメガネはやはり疲れるとか、いろいろ不満はある。つーか3Dブームもそろそろ終わりなんじゃないかと思うんだけど、どうなんでしょ。

事前にまったく情報を入れていなかったから、どういう映画なのか、実は観終わった今でもよくわからない(「彼方からの物語」という副題も、いま公式サイトを検索して初めて知った)。プログラムももう売り切れで買えなかったし。なので、ここにこうしてメモ書きしなきゃ、映画を観た事実すらすっかり忘れてしまいそうだ。
映画の中で、セリフはほとんど出てこない。プロローグで少し、「あの世界」に入ってからはほんの一言二言程度じゃなかったか。つまり、全編セリフなしで展開される映画で、まあシルク・ドゥ・ソレイユだしそれでいいんだろうけど、主役の男女の関係だとか、「あの世界」で敵味方に分かれて闘いが繰り広げられている理由だとかは、当然のことながらさっぱりわからない。ついでに言うと、主役たちは「あの世界」から「こっち」に帰ってくるものだとばかり思っていたのだけど、そういうエンディングにならずに終わってしまったので、あ、あのプロローグはホントにプロローグだけの役割しかなかったんだと最後に気づいてなんだこりゃ。

ストーリーは二の次三の次というのはこの手の映画の「お約束」でもあるのだろう、本作の眼目はもっと違うところにある。それはたとえば、パフォーマーたちの「肉体」だ。
3Dならでは、映画ならでは、という見せ方を、この監督はよく理解している。パフォーマーの身体(男女問わず)をこれでもかというほどじっくり見せるし、物理学を無視したような超絶技巧のパフォーマンスの数々はスローモーションでゆっくり映し出される。監督がいちばん観たかったもの、イコール、この映画のテーマ、だとするなら、これはじつにわかりやすい映画だといえる。
同じ演目を舞台で上演されても、観客席のわたしたちは、パフォーマーの身体をここまでじっくり鑑賞することはできない。この映画は、だから実に「わかっている」と言っていい。他人の肉体を「舐めるように眺め倒す」ことが可能なのが、映画だからだ(といってもこの映画はべつにポルノ映画のように肉体を舐め尽くしているわけではないのだが――とはいえ監督の目線にポルノ的視線がまったくないと言えばウソになるだろう)。

ショウの指し示す「ストーリー」が、予備知識をまったく持たない者にはいまいち解りにくかったことがひとつ、3Dメガネを装着することにより画面本来の色彩の鮮やかさが損なわれていたことがひとつ。この2点は大きな減点材料と言える。しかし、だからこそ、「もういちど」最初から見直したくなる作品でもあった。ブルーレイソフトが発売されたら、たぶん買ってしまうんだろうな。実はシルク・ドゥ・ソレイユのブルーレイはすでにずいぶん前に1枚持っていて(『コルテオ』2005/2008)、でも買ったまままだ一度も観ていない。本作のソフトも、ひょっとするとそういう扱いになりそうなんだけど。