:Into The Storm

2014年米映画/スティーブン・クエイル監督作品

主要登場人物のほとんどが常にカメラやスマホを持って撮影している映画。なかでもYouTubeで100万再生を狙うお馬鹿二人組の存在が、ことのほか大きい。ニュース番組にも「視聴者撮影」映像が使われるのが当たり前になっている昨今、映像制作のプロ中のプロである映画作家の取った手法は、なるほどいかにも現代的ではある。
自然現象系のディザスター・ムービーってのは、ジャンルとしてはそんなに多くはない気がする。竜巻映画には『ツイスター』というのがあるけどわたしは未見。機会があったらDVDを買ってみようかな。
途中まで全然関係ない複数の登場人物たちの、わりと淡々とした描写が続くんだけど、それがクライマックスに来て一気に意味を持ち始めるのが面白かった。上映時間は89分とそれほど長くないにもかかわらず、いや、だからこそというべきなのかな、ダレたところがほとんどないのは脚本と編集の巧さなんだろう。

災害を<体感>させる映画であり、その意図はじゅうぶん達成されていると思うんだけど、災害描写がリアルに近づけば近づくほど、フィクション部分の<嘘くささ>が気にもなる。特に主人公であるおっさん(高校の教頭)、そんじょそこらの一般人にしてはスーパーヒーローすぎなんじゃないの、とか思ってしまうのだ。溺れて瀕死の状態だった長男もそのあと普通に走ったりして最後の大災害を生き延びるし。弟は弟でどんなときでもビデオカメラを回し続けてるってのもちょっとなあ。
最後に馬鹿コンビが助かっていたのはギャグだとしても、もっと救いようのないくらいの絶望的なエンディングでもよかったかもしれない。まあ、そうなるとエンターテインメントじゃなくなるんだろうが。それと、これだけの規模の災害にしては直接的な死の描写はかなり少ない。家や自動車、はては飛行機までも飲み込まれて吹き上がっていく場面はあるんだけど、人間が巻き込まれていくシーンはほとんどない。だからこそ、その数少ない「死の描写」がドラマの中で印象に残るんだけれども。映画としてのこの抑制された態度は、むしろ現実に災害に見舞われた人たちに対する礼儀のあらわれなのかもしれない。

ともあれ、映画館で観る意味のある映画ではあった。何度も観たくなる映画ではないかもしれないけど、これはブルーレイの発売が楽しみ。