INTERSTELLAR

クリストファー・ノーラン監督/2014年米映画

たったひと組のカップルだとか親子だとかが全人類を滅亡の危機から救う、って大風呂敷はハリウッドならではの筋書きなんだろうか。本作のいちばん残念なところはそのいかにもハリウッドを大まじめにやっているところで、まあそれはそれで興味深い案件ではあるんだけど…。

ネット情報はほとんど見ず、できるだけ真っ白な状態で観に行った。入場前にパンフレットをパラパラ流し見していると愛は時空を超える的なフレーズが出てきたが、当然のことなんだかさっぱりわからない。
映画は宇宙の話だとばかり思ってたんだけど、冒頭から約30分くらいかな、ずっと砂嵐に苦しむ農家の話が続いて、しばらくなんだこれは状態だった。そういうアタマでも、序盤の幽霊騒ぎの種明かしはなんとなく見当がついたから、わかりやすい映画だとは思う。そういうわかりやすさもまた、ハリウッドならではなんだろうか。
宇宙ものということでは『ゼロ・グラヴィティ』が面白かったのがまだ記憶に新しい。もっとも、ブルーレイも買ったものの、まだちゃんと見終えていない。あの映画は映画館という密室空間でこそもっとも映える作品のような気がする。本作も上映館によってIMAX版とか4K版とかが用意されていて、そういう専用の装置を備えた密室空間で観てこその作品ではあるんだろう。わたしが観に行ったのは通常版なんだけど、音響とかはさすがに凄かった。家のテレビで観たらそのへんはかなり消えてしまうだろうから、パッケージソフトを買うかどうかは今のところわからない。
音といえば、ハンス・ジマーの音楽は嫌いじゃないんだけど、これもいかにもハリウッドというか、しょっちゅうBGMが鳴っているのは見ていて少し疲れる。ただ、本作は効果的に無音(静寂)を用いていて、緊迫感とか絶望感の演出に一役かっていた。

食糧難で滅亡寸前の地球、というわりにはインフラやモノの流通はまだなんとかなっていたみたいだし、各国で軍隊を廃止した理由だとか過去の歴史を否定したわけだとかは全く不明で、人類が滅ぶ危機に瀕している直接の原因も明らかにされない。そういう状態で宇宙空間にしか未来がない、しかもまだまだ未知の領域だらけで人類の存亡を賭けるにはあまりにリスクの大きいギャンブルで、そこまでして宇宙に活路を見出そうとするのがどうにも腑に落ちない。これ、人類滅亡って設定がそこまで必要だったのかなあ。
結局、主役ふたりが生き残ったのはヒーローの超人的活躍とギリギリのタイミングを上手く乗り切れた、これまたハリウッドお得意のご都合主義的展開のおかげなわけで、そこいらへんは科学的でもなんでもないのだけど、まあ娯楽作品だからいいのか。
 
役者たちはそれぞれ存在感たっぷりで、子役から老人まで、みなとても素晴らしかった。なかでもロボットのTARSがとってもキュートで、助演賞ものじゃないだろうか。