縁会2012〜3 劇場版

映画館でプログラムの類が売ってなかったので、備忘録がわりに。書いておかないと観に行ったこと自体忘れてしまいそうで。
これは中島みゆきのコンサート『縁会(えんかい)』の、2013年1月に行われた東京国際フォーラムでのライブを収録したもので、最後のあいさつ以外MCを一切カットし、ただひたすら歌だけを聴かせるという構成。楽曲じたいは、おそらくノーカットじゃないかと思われる。
フィルムコンサートっていうジャンルになるのかな、ミュージシャンのライブ映像を映画館で、というのは昔からあるけれども、個人的には今回がはじめて。曲名や歌詞がテロップでインサートされることもなく、ただひたすら楽曲だけが続いてゆく。映画館という密室空間だからこその没入感はたしかにあって、ライブ会場で聴く(観る)のとも違う、独特の雰囲気があった。
わたしが彼女のCDをせっせと買っていたのはずいぶん昔だ。すっかり聴かなくなってしまってもう20年近くはなるだろうか。かつて持っていたCDもほとんど全部処分してしまったはずだ。ふだんテレビの音楽番組(紅白とかも)をまったく観ないので、中島みゆきが歌う姿を眺めること自体もほとんどはじめてと言っていい。それでも演奏された曲の半分近くに聞き覚えがあったのは、それだけのキャリアとポピュラリティーがあるからで、ごく単純に凄いことだと思う。
劇場版として上映するなら、より芝居っぽい『夜会』の方がふさわしいのではと思わなくもないけれど、より純粋に「うた歌い」としての中島みゆきをじっくり見せるという意図があったのかもしれない。
楽曲のいくつかでギターを爪弾きながら歌っているのだけど、全然弾いていない時間帯もあるしギターの音はまず聞こえない。ギターを持っていない曲の時には多少芝居がかった身ぶりもあるけれど、ほぼまっすぐ立ってスタンドマイクに向かってしっかり歌う。どこまであとから調整されているのかは知らないけれど、声の張りと言い音程の確かさと言い、歌手として実に正統派の佇まいだ。
バックバンドはキーボード×2、エレキギター×1、ベース×1、サックス×1、バイオリン×1、バックコーラス×3(女×2、男×1、男の方は数曲でアコースティックギターも)。4層くらいの大きなセットにそれぞれ配されている。サックスのひとなんか最上階なんで、そーとー高いだろうなあ。
チケットは¥2500とふつうの映画に比べ割高ながら、満席とはいかなかったがけっこう客も集まっていた。熱心なファンも多いひとだからこそ、なんだろうなあ。
家庭用テレビで観るのと違って映画館の大画面ならではとでも言おうか、特にアップの場面でカメラのピントが甘かったのが気になった。おおむね前ピンというか、顔よりも手前のマイクの方にピントが合っていたように見えたのだ。アップが続く場面でときどきピントが前後に動くところもあって、そこらあたりちょっと酔いそうになった。相当の望遠になるからビデオカメラのピント調整が難しいだろうことは容易に想像できるものの、もう少しなんとかならなかったものか。DVD化されて家庭用テレビで見るぶんには気にならないレベルかもしれないのだけど、劇場版と銘打つからにはなあ。そこだけが、少々残念だった。


映画館ロビーでは、来週公開の『マエストロ!』が大々的に宣伝されていた。さそうあきら原作の音楽ものとしては『神童』に続く第二弾だが、さすがに三作目の『ミュジコフィリア』は映像化されないだろうなあ。というか『神童』も観なかったし今回もそれほど食指が動かないが、『ミュジコフィリア』だったら観に行きたいかも。なにせ、あれほど「音」が想像しにくいマンガも珍しいので。