マンガの定義

漫棚通信ブログ版: マンガって何
非常に興味深いエントリです。

さて、ここにモナリザの絵があるとします。これを見たとき、マンガであると思わせるにはどうしたらいいか。

モナリザに髭を描き足したマルセル・デュシャンの『L.H.O.O.Q』はマンガである…と言えば、デムパと呼ばれるかな。けれど、この作品がマンガに近いポジションにあるはずなのは間違いないと思います。
笑うなり怒るなり、その絵を観る人に感情的に訴えかけるだけの「アイディア」があるとき、タブロー画であってもそれは一枚絵を越えているでしょう。
たぶん、一コママンガには、「アイディア」が必須なんだと思います。もう少し正確に言えば「マンガ的なアイディア」が必要なのである、ということになるのでしょう。「マンガ的」とは何ぞや、というツッコミはありますが。
ダダやシュールレアリズムの一派には、この手のアイディアものが少なからずあります。たとえば裸婦の背中にヴァイオリンのf字孔をくっつけたマン・レイなんかもそうでしょう。
ドキドキさせたり、泣かせたり、といった「ドラマティック」な要素は、ストーリー重視のコマ漫画の独壇場でしょう。*1それに対し、カートゥーンの領分は、ニヤリとさせたりクスリとさせるような、「ちょっとしたアイディア」にあるのではないでしょうか。上に掲げたデュシャンマン・レイのように、その多くは「パロディ」や「からかい」や「だまし絵」の要素を伴うことになります。
 
というのとは別に、私がかねがね「これはマンガだよなあ」と思っているのが、ラウル・デュフィ。オーケストラを描いた水彩画なんかは、本当に音が聴こえてくるかのよう。ただ、デュフィをカートゥニストという人は誰もいないでしょうけど。

…うーん、西欧近代絵画を例に出すと、どうしても教科書的なお堅い話になるなあ。いまの日本の状況に沿って言うと、「くすっと笑えるアイディア付きの一枚絵」は、むしろイラストレーションの分野に多く見られるような気がしています。

*1:もっとも、一枚絵でも、壮大なストーリィを語ることは可能なはずです。ただし、それには読み取る側のリテラシーが必要になるでしょう(ex.『ゲルニカ』byパブロ・ピカソ)。