岡野陰陽師、ついに完結!

長かったぁ〜。
でも、13巻は堂々たる大団円でなかなか感動的だった。ちと不満なのは、前半あれほど大活躍だった菅公菅原道真が、後半ほとんど出てこなかった(出てこれなかった)ことかなあ。
 
雑誌連載は全く知らず、私は単行本でしか読んでないけれども、はじめの1〜2巻の頃は、作者は夢枕原作と戦ってるように見えた。それが中盤になると、登場人物と戦いはじめ(雨乞いとか歌合わせ)、内裏炎上以降になると登場人物と一緒になって物語の中を戦ってるように見えた。
いや、「戦ってる」という言い方が適切なのかどうかはわからないけど。
 
11巻くらいかな、話が急激に熱暴走しはじめてびっくりしたんだけれど、まあ連載漫画じゃよくある現象だし(例えが古すぎるけど、梶原一騎とかアストロ球団リングにかけろなんかのジャンプ系とか)、むしろここまで広げた話をどう収拾つけるのか、本当につけられるのか、それだけが気がかりだった。
11巻のあと、単行本がしばらく出なくなって、ひょっとして未完結で終わるのかな、とか心配してた矢先に12巻が発売。驚いたのは、小ネタというかギャグがずいぶん増えたように感じて、それまでにもなかったわけじゃないけど、12巻では、なんというか、作品の中で開く者がずいぶん自在に遊べるようになったなあ、と思った。あ、これなら13巻は安心していいよな、とも感じた。
 
【追記】
「安心」というのは、つまり、作者はちゃんと作品と適度な距離を取っているな、という安心感のこと。ほら、まれにあるじゃないですか、作者がいつの間にか作品世界のお筆先みたくなっちゃうケースが。アレはアレで凄いんだけれども、一方ですごく痛いことでもあるし、なにより作者がその作品から帰ってこれなくなってしまうのが最大の不幸。
岡野さんはそのへん、ちゃんと自分を守っているな、と思う。
 
 
 
その最終巻、昨夜夢中で読み終えた。予感通り、すっかり安心して読めた。主人公の危機、愛する人の救出と、いやあ、少女漫画の王道的ストーリー。さすがです。
ツンデレ真葛ちゃんが、ラスト近くで急成長したのも感動的。うーん、純愛ですなあ。
 
正直言って、今のところ、細かな部分はさっぱりわかっていない。ディテールは、このあと何回も読み直して楽しむことにしよう。そんな読み方しかできてない段階だけど、それでも、こんなハッピーエンドの漫画はここ最近なかったんじゃないかと思ってしまうぐらい、見事なフィナーレだと思った。登場人物みんな、なんですっげーいい奴になってんのよ、てなツッコミもあるかと思うけど(笑)。
 
この作品は画像表現の緻密さでも評判になった(原画も美しかった)が、こと単行本に関していえば、祖父江慎氏のデザインワークがすさまじく良い。そういえば、この装丁はなにも受賞してないのかな。
 
内裏が炎上してからは<世界の救済と再生>みたいなところに話がいっちゃったけど、<世界=魂>ならばこの作品の当初からそういうテーマだったと言えなくもないか。救済のステージ/レベルがどんどん上がっていった、ってことか。
物語の舞台が平安京なんで、京都在住人としてはずいぶん面白がって読んだけど、ここに出てくる「平安京」はあくまでフィクション/ファンタジーの舞台としての京都。だもんで、漫画のブーム以降、晴明神社のステッカーを貼ったクルマとかを、やたら目にするようになったのにはちょっと苦笑してしまったりする。