日本人移民訴訟「賠償請求権は消滅」

ドミニカ日本人移民訴訟、「賠償請求権は消滅」と棄却
 戦後の移民政策でカリブ海ドミニカ共和国に移住した日本人170人が、政府の宣伝を信じて移住したのに、過酷な生活を強いられたなどとして、国に約32億円の賠償を求めた訴訟の判決が7日、東京地裁であった。
 金井康雄裁判長は「国は入植予定地を十分に調査せず、適切な移住先を確保するよう配慮する法的義務に違反した」として国の不法行為責任を認めた。
 しかし、不法行為から20年で損害賠償請求権が消える「除斥期間」を経過したとして、請求を棄却した。
 ドミニカ移民の集団訴訟では、戦後の移民政策を巡り、初めて国の責任が問われた。「戦後移民政策の最も悲惨な失敗例」とされるドミニカ移民について、司法がその原因が国にあるとしたことで、今後、移住者らへの支援策にも影響を与えそうだ。
 原告は1956〜59年にかけてドミニカに移住した141人と、いったん移住した後、過酷な生活に耐えられず61年以降に集団帰国した29人。
 原告側は、「移住者は『優良な農地が無償で手に入る』という募集要項の条件を信じて移住したが、実際の移住地は不毛の土地で、土地の所有権もなかった」などと主張した。
 判決は、ドミニカ移民についてまず、「当時重要な政策として位置付けていた国策」としたうえで、国側の法的責任を検討。「海外移住は、移住者と家族の人生に多大な影響を及ぼすので、国は農業に適した移住地を確保する法的義務を負っていた」と指摘した。
 また、「国が移住の実施に先だち、現地調査や事前の外交交渉を十分に行わなかった」と認定し、当時の外務省と農林省の担当職員、さらに両大臣に職務上の法的義務違反があったと判断した。
 移住者を募集するために作成した募集要項についても、「具体的な記載がなかったり、不十分な記載しかされなかった」と、言及した。
 一方、判決は、国家賠償法民法の規定に基づき、不法行為から20年が経過すると賠償請求権が自動的に消滅する除斥期間を設けていることから、「原告らが、移住により幾多の辛苦を重ねたことは十分に認められるが、提訴が入植から20年以上を経過しており、賠償請求権は消滅した」と結論づけた。
 ドミニカ移民問題を巡っては、00年12月、外務省が当時の外交文書を公開し、ずさんな事前調査や拙速な政策推進の実態が明らかになり、04年3月、小泉首相が「外務省に多々反省するべきことがあった」と、政策の不手際を認める国会答弁をしている。
 この発言を受け、政府は移住50周年を迎える今年、現地の地域交流センター建設に助成費を出すなど移住者の支援に乗り出すことを表明した。
(2006年6月7日11時45分 読売新聞)

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