スポーツ報道というもの

例えば、これ→アナウンサー坂田博昭の「馬のない日はつれづれ」
http://www2.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=178058&log=201002
競馬や競艇、競輪を主に担当しているフリーアナウンサー氏の個人ブログ。バンクーバー大会のカーリング戦評がとても読み応えがある。さすが長年「勝負の分かれ目」を目の当たりにしているひとならではだろう。視点が非常に鋭くて、読んでいてとても面白く、かつ勉強になる。



それに対して、例えば、これ→日刊スポーツ:カーリング新アイドル!近江谷妹ソチの星
http://vancouver2010.nikkansports.com/curling/news/p-sp-tp0-20100225-599864.html
ニッカンは一貫してカーリング女子をアイドルとしてしか見ていない。ある意味ブレがないのでそれはそれですごいのかもしれないが、しかしトリノの頃ならまだしも、今でもまだそういうスタンスとは「情けない」の一言で、おそらく彼らはカーリングという競技じたいを内心バカにしているのだろう。わたしにはそうとしか思えない。



どちらが「その競技の魅力を伝えているか」は一目瞭然として、問題は、なぜ、こんなに面白い記事がいちスポーツジャーナリストの個人ブログでしか発表できないのか、だ。
なぜ全国発売される大手新聞に、カーリングの奥深さや勝負のあやを伝える文章が載せられないのか。
囲碁や将棋の観戦記と同じように、ストーンの配置図(バンクーバー五輪公式にはShot by Shotという、いわば棋譜にあたる記録がPDFで残されている)を使って「勝負のポイント」を詳細に伝えるべきで、そういうことを続けていってはじめて競技が広く普及できると思う。そしてその勝負のポイントは、なにも大量得点を決めた最終エンドのスーパーショットにあるのではなく、じつはもっと序盤からすでに決まっていたという場合も少なくない。そういう「観戦素人には気付きにくいポイント」をきちんと書いてこそ、はじめて「スポーツ報道」なのではなかろうか。

カーリングは誰でもできるスポーツだと、よく言われる。しかし実際には特殊なリンクと道具が必要で、日本中の誰でもが気軽にプレイできるような競技環境の整備など、事実上無理だ。だからせめて「見功者」をひとりでも増やす方がいいだろうに。ある競技が広く知られるというのは、そういうことだ。
そんなごく当たり前のことをやろうとせず、いつまでたっても<次代のアイドル>だの<萌絵〜(はぁと)(これは対イギリス戦後の見出し)>などとやってるから「マスゴミ」と蔑視されているのだ。
大手メディアはいつになったら気付くんだろうか。