海街diary

2015年東宝・ギャガ/是枝裕和監督作品
映画が終わって外に出ると、朝までの大雨が嘘のようなきれいな青空に、たぶん今年はじめての入道雲。あ、なんとなく吉田秋生っぽい空だ、と思った。

吉田秋生原作の映画といえば、遠い昔に『櫻の園』を観て以来かな。といっても映画館ではなく、たまたまテレビでやってたのを観ただけ。とはいえすぐに画面に引き込まれて、最後まで目が離せなかったのを覚えている。その時点でたしか原作は読んでなくて、慌てて読んでみたら(映画を先に観たせいかもしれないけど)いまいち乗れなかったのもよく覚えている。映画の凝縮された濃密な時間にくらべ、散文的な原作のリズムがちょっと勝手が違ったというか。時間をおいてふたたび原作を読んでみたら、また違った印象だったのでまあ表現手法の違いなんだろうな。


さて、『海街diary』。実はこちらも原作はちゃんと読んだことがない。単行本第一巻だけ漫画喫茶かどこかで見たかな?でもあんまり覚えてないや…という程度だ。鎌倉が舞台の四姉妹物語、という程度の予備知識だけで映画館に向かった(予告編も見ていない)。

季節感の描写がとても丁寧で美しい。花火大会のところだけちょっと物足りなかったけど、それ以外は画面の美しさにただただ見とれていた。鎌倉行ったことないんだけどやっぱ一度は行ってみたいなあ。

diaryという題名にふさわしく…なのかどうかわからないけど、淡々と日常描写が続いて特に大きなドラマが進行するわけではない。誰視点の話なんだろう、と途中で気になった。すずの物語でもあるのだろうし、長女の物語、いやあるいは死んでしまった父親の物語なのか。葬式ではじまって葬式で終わるという構成は「ここからいなくなった人たち」と「ここに残された人たち」との物語である、ということなのかもしれない。
や、もっとギスギスドロドロした話になるのかな、とか思ってたんですね。でも出てくる人みんな(内面に抱えているモノはそれぞれあるにせよ)いい人たちで、ちょっと拍子抜けちゃったというか。長女と次女の喧嘩もなんだかかわいいものだったし。もっとえげつなくモメる姉妹だってあるはずだし。でもそんな(テレビの2時間ドラマみたいな、と書くと語弊があるか)よくありそうなものでなくて良かった、とも思う。どんな話だった?と誰かに尋ねられたら四季が美しい話だった、などとよくわからない答え方をしそうだけど。
やたら大げさに感情を荒立てることはなく、ふとした表情や仕草、そしてなにげない会話で進んでいく物語。昨日まで赤の他人で、しかもそれなりに年の離れた人がいきなり家族になるということの葛藤がもっと色濃く演出されてもよかったかなとも思うんだけど、この淡々さは、これはこれでいいのかもしれない。そういう意味では、三女のマイペースな存在がけっこういい感じだったかも。すずとふたりだけの昼食もよかったし、花火大会で客が誰もこないスポーツ用品店での店長とのやりとりもなんだかじんと来た。それと、次女の彼氏がいきなり貯金を全額おろしにきたあたり(そのあと別れるし)はちょっとよくわからなかった。そのへんは原作読めばわかるのかな?



さて、それじゃ原作本を買って来ましょうかね。