アー

忘れないうちに、こちらも覚え書き。

『ふたりのアー』asu no ah 第一回公演
本公演は昨年秋に東京で行われたもので、わたしが見たのは追加公演的な扱いになるのかな、初の関西公演でもあるのでまあどうでもいいんであるけど、京都市中京区の元立誠小学校跡地(現在は映画や小演劇の自主公演などのアートスペースとして活用)で2016年02月13日に行われた公演を観に行った。
計9つのコントからなる作品。それぞれは独立していて無関係なようで、けれどもどこかでつながっているような、そんな微妙なお話しだった。
出演者はニフティが運営している人気ウェブサイト「デイリーポータルZ」でおなじみの人たちで、劇団の主宰と脚本・演出は同サイトの人気ライターのひとりでもある大北栄人さん。他の出演者は、ライター陣では土屋遊さん、藤原浩一さん(サイトの編集スタッフでもある)、そして大北人脈で舞台俳優の松村翔子さん、映像作家の森翔太さん、パフォーマーの栩秋太洋さん。デイリーポータルZの古参でもある住正則さんは事故にあって今回は休演なのが残念。
 
正直なところ、大北コントにはさほどシンパシーを感じたことがなかったので、それほど期待もしていなかったん。でもやっぱナマのステージっていいわあ。始終笑いっぱなしだった。
大北さん作のコントで、ネットで確認できるのっていうとたとえば→http://portal.nifty.com/2009/12/06/c/20091206_full.mp3
あたりで聴けるものがあるけれど、ノリそのものは当時とほぼ変わらないと思う。というか上記のラジオを聞き返してみると、そうか彼は当時からずっとコントをやりたかったんだなと。
公演時に配られたプログラムに掲載された大北さんのコメントによれば、ここまでくるのに12年かかったとか。そういう視点でみるとようやく自分のやりたかったことが実現できた、そのこと自体にうるうるする。

『ふたりのアー』は、基本的には男女ふたりが演じる「すれ違いコント」だ。オープニングに演じられた<危ないから押さないでよ>や<気になる点>などどんどん観客を置いてきぼりにするネタが多いが、<向田邦子作>や<物語を物語らないで>、あるいは<和風創作ダイニングバーとかじゃない将来の夢>、またラストの<スタンプラリー>などを含め、いずれも現実に対する直接的な意地悪/批評的な視点を持つ。そこが気に障るという向きは一定数いるだろうと想定したうえで、彼の発想と作劇法はいわゆる「サブカル」というジャンルに収まるものだろうとは思う。
 
実際にナマのステージを観ると、やはりいろいろ思うことはある。
観劇中いちばん惹かれたのは、松村翔子さんのさすがの演技力。ついで栩秋太洋さんと森翔太さんの計り知れない面白さ。ここに藤原浩一さんの意外性を加え、本公演でもっとも感動したのはこの4人の存在感だった。この人達を間近で観られたのはなによりだったので、ここに特筆しておきたい。

7月末には次回公演を予定しているという。住さんが無事復活できるのかも気になるが、忘れずに観に行くつもりではある。その時には初回公演のDVDとかが販売されてるといいなあ。いや、何度でも見直したくなるほどずっと後を引く作品なんですよね、これ。