殿、利息でござる！

2016年／中村義洋監督作品

タイトル、およびキービジュアルからてっきりドタバタコメディかと思ってたら、意外にシリアスなドラマだった。実話がベースになっていることから同じ松竹映画『超高速！参勤交代』（まさか続編が作られるとは思ってもみなかった）と似たテイストを持っていて（そういえばロケ場所の一部、ひょっとして共通してないか？）、ただしあちらは途中でド派手な立ち回りシーンが出てきてびっくりした覚えがある。火薬が盛大に爆発するあのシーンさえなけりゃそこそこいい映画なのにな…と当時思ったものだ。だから今回もそういう無茶な場面があるのかと身構えていたんだけれども、そういうことはなく、キレイに終わってくれた。ということで全体の作りとしては今作の方が好み。
とはいえ本作のメッセージ性は参勤交代以上にかなり重いもので、そこを上手にエンターテインメントに仕上げるためにあえてコメディの衣をまとったんだろうな、ということに後で気付いた。なにせ無闇に真っ正直に作ると鼻持ちならないお説教映画となってしまうおそれだってあっただろう。
家族の話が密接に絡み合っているのもうまいところで、兄による弟／実家への昏いコンプレックスが、映画後半でがらっとひっくり返るあたりは息を呑んだ。しかもこの兄弟の確執譚が単なる取って付けたようなエピソードなのではなく、ちゃんと本筋にもしっかり絡んでくるのは観ていてたいへん気持ちいい。こういう仕掛けはエンターテインメントの王道でもあるんだろうけど、それをきちんと手順を踏んで観せてくれるから、観客としてはただただ安心して画面に浸っていられる。
笑って、泣いて、ハラハラさせて、最後にきちんと締めてくれて。ああ、今日はいいもの観たな、と思いつつ席を立てる。画面の明るさなんかはイマ風（というかテレビドラマっぽい）なんでどちらかというと好みではないけれど、そういう絵作りもたぶん意図的なんだろう。あと、人足にいたるまで登場人物がみんなとっても教養があるっつーか難しい故事成句めいたものを口にするのはちょっと違和感がある（そのへんもテレビっぽさを感じる理由かな）けど、全体的に言えば、たいへんいい映画だった。