盗作といえば…

私が未だに許せない一件がある。フランスの著名漫画家ジャン・ジャック・サンペにそっくりの絵を描く、日本の“自称”イラストレーターがいたのだ。もう10年ちかく前になるだろうか? 日本版エスクワイヤなどに描いていたのを覚えている。
あるとき「サンペ」でネット検索したら、その“自称”イラストレーター本人のホームページが見つかった。プロフィールだかどこかだかで、堂々とサンペ好きを公言してやがる。
そ奴の名前も忘れたし、そのホームページも今ではたぶん消滅していると思う。探す気もない。同じようなタッチのイラストは、少なくとも私の目に入る範囲では最近見かけてないので、とっとと廃業したか、あるいは別のスタイルに宗旨替えでもしたのかもしれない。
「未だに許せない」と書いたが、本人に抗議メールを送ったとか、サンペにタレ込んだとか、当時そういう行動はとらなかった。今だったらたぶん、本人宛にメールくらいはしていると思う。


おそらく、“自称”イラストレーター氏には盗作している認識はほとんどなかったんだろうと思う。日本では、サンペは今でも「知る人ぞ知る」的存在だし(とはいえニコラは有名なんだけどねえ)。アイディアをそっくりいただくならともかく、タッチを真似する程度なら問題あるまい、と考えていたと思う。
ある時期まで、実感としてはバブル景気ごろまで、デザインやイラストレーション業界周辺では、そういう考え方は特に問題となるものでもなかった。日本人どうしでパクるのはさすがにアレだが、外国人作家の絵だったら、むしろ積極的に盗んでいたし、「よく勉強してる」などと感心されていた面もあったように思う。海外からの情報がまだまだ貴重だった時代の話である。
推測だが、件の洋画家氏も、盗作の認識は希薄だったんじゃないだろうか。彼が画学生だった時代には、海外作家のパクリなんて、むしろ積極的に推奨されていたような気がする。彼が「これは盗作ではない」と強弁するのを聞くと、どうもそうとしか思えない。


いまさらだが、ネットの普及をはじめとする「グローバリズム」ってのはスゴイよなぁ。って、ちょいと的はずれな感想だが。