巨大な<システム>

はてなブックマーク→逃げた船長にブチ切れる海軍...鈴なりの客...イタリア客船事故直後の通話記録と暗視カメラ映像(動画) : ギズモード・ジャパン
http://b.hatena.ne.jp/entry/www.gizmodo.jp/2012/01/post_9894.html

コメント見てると東電と重ね合わせている意見がちらほら。なるほど。


乗客4000人、プールが4つにバーやレストランやその他娯楽施設がいっぱいと、大きなリゾートホテル並かほとんどひとつの小さな街である。
この種の娯楽船の船長の仕事がなになのか知らないが、船の操縦や運航なんかではなく、接客や各種設備やサービスに不備がないかとかそういう方にばかり気が向いていたんだろう。民放BSで豪華客船の紹介番組があって何度か眺めたことがあったが、まあそんな感じではあった。
大西洋を横断するような本格的な旅客船ならともかく、地中海のなかを比較的短い距離運行するだけだった、というのもある種の<油断>を誘発させていたかもしれない。
この船の船長は素人同然だったらしいという話をどこかで(2chだったかな)見かけた。真偽の程はもちろんわからんが、まあそんなものかもしれないなと思う。そうして、この船は、というかこの船を含む<システム>はあまりにでかく、とてもじゃないが彼(船長)の理解に収まるものではなかったんだろう。
だいたい島に行くのになんでプール付きの船が必要なのか。高速船でさっさと連れていきゃいいものを、なんでリゾートホテルがそのまま海に浮かんだみたいなものに客を乗っけて、ゆっくりゆっくり行かなきゃならないのか。それは、そうすることによって、お客からいくらかでも余分な「お金」が引き出せる<システム>だから。<集金システム>はかくして肥大化してゆき、船はみるみる巨大化してゆく。で、その結果プール4つ。<システム>のおかげで、もうすでに船じゃなくなる一歩手前まで、乗り物がなにか違うものに変質していく。あれだ、『AKIRA』で、クスリによって「覚醒」し最後に怪物になってしまったテツオみたいな。


原付の免許しか持ってなくてふだんお買い物スクーターしか乗ってないヤツがいきなりF1マシンを運転しろといったって無理な話だ。いやエンジンで動くものだし同じだろ、なんてそそのかされて乗車してみたものの、なにもかも違う世界でお手上げでしたってなる。
想像だがこの船長は、この船がどうやって動いているのかもよくわかっていなかったのではなかろうか。結果的に大事故になったから「酷い話だ」ということになるが、こんなに巨大な船だと、全自動というか、誰が操作しても同じじゃん、みたいな感覚もあったかもしれない。まあ船長はただの接客業、サービス業だとして、じゃあ機関士や操縦士はどうだったんだ、ということになるのだが、この惨憺たる結果を見るに、やはり船長と同じレベルだったのかもしれない。



<システム>が巨大になると人間の感覚は麻痺する。というか自分の手に負えないものを前にすると、人はそれを頭から消して、見なかった振りをする。そうでもしてないと毎日生きてゆけない。
巨大なシステムを的確に制御するにはやはりそれなりの技術や経験がものを言う。職人の世界だ。F1マシンが誰にでも運転できるものではないのと同様に。
一方で、仕事の<システム>化は「誰でも簡単に」が目的であって、これによって職人でなくとも、技術や経験がなくとも、ある一定の安定した成果が達成できる。ファミレスやコンビニの業務なんかはシステムの塊なんだろうけど、こういったシステムがあることよって社会がよりスムーズに回っていってる。
コンビニの<システム>だって、流通とかいろいろ含めたら観光船以上の巨大なシステムだし、仮にそれが<暴走>でもしたら(どういう状態を暴走と言うのかよくわからんが)社会が大混乱を起こすことだろう。それが<システム>である以上、そして人間が操作している以上は、いつなんどき一瞬にして「崩れてしまう」かわからない。ま、それ以上の妄想は、少し前ならSFネタだといわれたものだ。
しかし「こんなビルが飛行機テロで倒壊するわけない」「原子力発電所が壊れるわけない」「こんな大きな船が沈むわけない」…21世紀ってやはりSFなんだなあ。