恵方巻と私

はじめて「恵方巻」なるものを知ったのはいつだったか、今となっては全く思い出せない。
「節分には巻き寿司をがぶっとやるんやで」「え〜、なんやそれ、ヘンなの」
級友とそんな会話をしていたような気もするから、そうすると小学生か中学生の頃か。とはいえ、しばらくは家でそういう行為が行われることはなく、紙でできた鬼のお面がついた豆を母が商店街で貰ってきて、それを適当にばらまいていただけだった。
我が家で寿司のまるかぶりを行うようになったのは数年後? その頃には、新聞の折り込みチラシにも「今年の恵方は○○です!」という、京都の寿司組合だかが作った広告が入っていた。
「今年の方角って、こんなん誰が決めてんねん」などと家族でツッコミつつ、誰だって寿司は好きだし、母親からすれば晩ご飯のおかずの手間が少しは減るし、まあ年にいちどのお祭りみたいなものだし、ということでいつのまにか恒例行事となった。ちなみに豆まきの方は、わたしが高校生か大学生になる頃にはもうやめてしまっていた。なにせあとの掃除が大変だったし。
 
今でこそコンビニがメイン戦場のようになっているけど、当初はふつうのお寿司屋さんが広めていったのだろう。そういう風習の、そもそもの起源とか由来については、以前ちょっと調べたことがあったが忘れた。いわゆる「江戸仕草」みたいに、由来といってもはなはだ心許ないものだったように記憶している。七草がゆだとか、土用のウナギだとか、その手の縁起物はあまり深く考えずに、ただのっかっていればいいものであって、それこそ鰯の頭も信心から。そういえば、このことわざも「節分に鰯ってナニそれ」ってツッコミに対する答え、だったのかな。

近所のコンビニやスーパーでは、正月が終わるとすぐに予約の幟が立ち並んでいた。ハロウィンが終わったとたんにクリスマスが、12月に入ったらすぐに新年準備のセールが、などとどこも商売熱心なものではある。コンビニが大々的に売り出すようになったらその「風習」は世間的にはピークを過ぎ、徐々に衰退に向かっていくんじゃないかという気がするんだけど、これはまあいくらなんでもうがち過ぎかもしれない。